「免疫力」を高めるために
「パンデミック(世界的流行)」が危惧される新型インフルエンザの大流行。必要なワクチン接種も数が足りないし、接種しても完全に安心とは言えない。私たちはこの未曾有の新型インフルエンザに対して、自らが発症しないように「免疫力」を高める必要がある。“一歩進んだインフルエンザ対策”とは――。
狭間研至(医師・医学博士)
Kenji Hazama
はじめに
今年の秋から冬にかけて大流行が予想される新型インフルエンザ。その対策の目玉として、ワクチン接種があげられていますが、厚生労働省からの発表を見る限りでは、その数量が十分ではないことも予想されます。また、予防や治療を目的とした抗インフルエンザ薬についても、その供給が十分に確保できるかどうかが不確実な状態のようです。
インフルエンザの予防・治療の中で、ワクチン接種や抗インフルエンザ薬の投与は中心的な役割を果たすものではありますが、それ以外にもいろいろな方法があります。また、逆に言えば、ワクチン接種をすればそれで完全に安心かというと、決してそうではなく、その他の総合的な予防策を講じることの重要性には変わりはありません。
今回は、「一歩進んだインフルエンザ対策」についてお話します。
基本は手洗いとうがい
インフルエンザは、季節性インフルエンザであっても新型インフルエンザであっても、ウイルスが原因です。このウイルスが、私たちの身体の中に入って、増殖した結果、インフルエンザとして発症します。
私たちの身体は、皮膚で覆われていますが、ウイルスはこの皮膚を通って体内に入ることはできません。つまり、インフルエンザのウイルスは、皮膚で覆われていない鼻と口からしか体内に入ってこないわけです。
インフルエンザに感染している方が、顔の真ん前でくしゃみや咳をするという状況はなかなかありませんが、たとえば締め切った部屋や教室の中だと、結果的に室内に存在するウイルスが鼻や口の粘膜に付着する可能性はあります。
また、咳やくしゃみの際の飛び散ったウイルスを含む唾液の飛沫などが、テーブルや椅子、ドアの取っ手などに付着し、それらを知らずに手で触ってしまうことがあります。
普段はあまり意識はしていませんが、私たちは意外に顔の周辺に手をやる動作をしているものです。たとえば、アゴをさすったり、顔を手で覆ったり。また、食事の際にも、スプーンやお箸を使っていても、手が頻繁に顔の周辺にいきます。こういった何気ない行為が、感染の端緒になる可能性もあります。
したがって大切なことは、手洗いとうがいです。石けんやうがい薬も用いながら、物理的に水でしっかり洗い流すことです。手洗いは、15秒程度かけて行うことが推奨されています。うがいについては、少し議論があるようですが、埃などを洗い流すためにも、私自身は患者さんにお勧めしています。
また、マスクを着用することに加え、外出から帰った後には、洋服にウイルスが付着している可能性もあるので、早めに着替え、部屋に持ち込まないことも重要です。繰り返しますが、インフルエンザのウイルスをしっかりとした手洗いで除去し、うがいを怠らないことです。これが、インフルエンザ対策の基本となるでしょう。

インフルエンザを発症しないために大切な「抵抗力」=「免疫力」
手洗いやうがいをしっかりしていても、毎日の生活の中で、どうしても避けられないケースがあります。そんな時に備えて、粘膜に付着したウイルスを増やさないための対策も考えておきましょう。
私たちの身体には、「抵抗力」が備わっています。インフルエンザのウイルスに限らず、かぜのウイルスや食中毒の細菌など、いわゆるいろいろな「ばい菌」は私たちの周りにたくさんありますが、それらのほとんどに負けずに過ごせているのは、この「抵抗力」があるためです。この「抵抗力」を医学的に言い換えると「免疫力」となります。
「免疫」とは「疫(=病気)を免(まぬが)れる」と読めますが、まさに、こういった身体の外から入ってくる「ばい菌」をやっつけて、病気にならないようにする力のことで、私たちの身体の中に、もともと備わっているものです。
しかし、過労やストレス、不規則な生活やアンバランスな食生活などによって、この免疫力が低下していると、ウイルスの増殖を抑えることができず、インフルエンザの発症へとつながるのです。
「免疫力」を維持・向上させるために
「免疫力」を維持するためには、十分な睡眠・休養と、適切な栄養バランスが重要です。忙しい毎日ではありますが、体調管理に気を配ることは、やはりおろそかにしてはならないことを、再確認していただきたいと思います。近年、私たちの「免疫力」を調整しているキーの一つが、「腸内細菌のバランス」であることも、種々の研究成果として報告されています。
たとえば、乳酸菌の一種であるFK-23菌は、腸内の善玉菌を増加させ、腸内細菌のバランスを整えたという報告があります。また、細胞がウイルスに感染した際に、病原菌から身体を守るために自衛的に産生する「インターフェロン」という物質がありますが、FK-23菌は、このインターフェロンの産生を高めたとも報告されていますので、こういった機能性食品を、一歩進んだインフルエンザ対策の一つとして活用されることもよいでしょう。
さいごに
どんな病気もそうですが、まずは、予防が大切です。しかし、予防をしっかりしていても病気になってしまうことはあります。もし、急な発熱、全身の強い倦怠感、節々の痛み、咳など、気になる症状があれば、速やかにお近くの医療機関で受診されることをお勧めします。

はざま けんじ
医師・医学博士・外科専門医・呼吸器外科専門医。
平成7年大阪大学医学部卒業後、第一外科に入局。国公立病院にて外科診療に携わった後、平成12年大阪大学大学院医学系研究科博士課程。平成16年同修了。平成16年ファルメディコ株式会社 代表取締役。
現在、一般社団法人 薬剤師あゆみの会 理事長。薬局の運営に携わるとともに、医師として、在宅医療や補完医療での活動も行っている。