
狭間研至(医師・医学博士)Kenji Hazama
意外に治りにくい膝や腰の痛み
「この膝の痛みさえなければ……」「腰痛がひどくて長く座っていられない……」という方も多いのではないでしょうか?
年齢とともに、膝や腰の関節が少しずつ傷んでくることは致し方ないことです。しかし、近年、メタボリックシンドロームという言葉が一般的になってきたことに代表されるように、どうしても体重オーバー気味の方が増えていることもあり、膝や腰の痛みに悩む患者さんの数も、非常に増えています。

膝や腰の痛みということであれば、まずは、整形外科を受診される方も多いと思いますが、なかなか満足のゆく結果が得られないという方も少なくありません。
今回は、「関節の痛み」にお悩みの中高年の方に、その基本的な考え方と対策をそっとお伝えいたします。
膝や腰の痛みの基本的な考え方
そもそも、なぜ、膝や腰が痛むのでしょうか。少し乱暴な譬えかも知れませんが、機械に例にして言うと、(1)部品が傷んでくる、(2)潤滑油が少なくなる、という2つの理由によるものと言うことができます。すなわち、人の体では、膝や関節の骨や軟骨が、変形したり弾力性が失われたりすることと、関節の周囲にある粘液の粘りがなくなってきたり、産生が少なくなったりすることになります。
そうすると、今まで滑らかに順調に動いていた膝や腰も、きしみが出たり、動かしづらくなったりしてきます。クッションの役割をしていた軟骨の傷みによって骨同士が直接こすれたりするようになり、膝や腰に炎症が起こってしまいます。炎症が起こると、その部位は熱を持ち、痛みが出てくるとともに、膝の関節に水がたまってくることもあります。
このような症状は良くなったり悪くなったりを繰り返しますが、こういった状態を長く続けていると、膝や腰の骨そのものが変形してしまう可能性も高くなってきます。
医師の基本的な治療法
一般に、加齢性変化によって膝や腰の痛みが出ている患者さんに対して、医師が考え、行う治療は以下の通りになります。
?負担の軽減
膝や腰の痛みのもとになる大きな原因は、体重の増加です。重い荷物をずっと載せていると、車のサスペンションが傷んでくるように、過度の体重は、膝や腰に負担をかけ、症状を悪くします。また、歩行や運動が少なくなり、膝や腰を支える筋肉が衰えてくると、それだけ重量における負担が増えてしまいます。
そこで、少し太り気味の方については、まずは、ダイエットをおすすめするとともに、ウォーキングなどの運動を通じて膝や腰の周囲の筋肉を強くして、関節そのものにかかる負担を少なくすることが重要です。
?痛み止めの投与
関節に炎症が起こると、熱と痛みが出てきます。そこで、用いられるお薬が「消炎鎮痛剤」、いわゆる「痛み止め」です。「痛み止め」には、飲み薬の他に塗り薬や貼り薬(湿布やテープ)があります。これらは、痛みの原因となる物質に直接作用するので、まさに、痛みは止まります。
しかし、骨や軟骨の劣化や、潤滑液の不足を、直接治すお薬ではありません。また、飲み薬の場合には、胃の粘膜を荒らしてしまうことも少なくないので、長期にわたってのみ続けることが難しいという方もいらっしゃいます。
?理学的療法
これは、関節への負担を下げたり、炎症を軽減したりするために牽引や温熱治療を行うというものです。
物理的な圧迫を一時的に解除したり、血流がよくなったりしますので、症状は改善することが多いですが、一時的な改善になることも多いです。
?手術
長期にわたって膝や腰の関節への負担が続くと、骨そのものが変形してしまいます。その変形の程度や具合によっては、痛みを取り除くには、ダイエットや筋力増強、薬物治療や理学的療法といった保存的治療では限界に達してしまうことがあります。
このようなケースについては、やはり、外科的処置が必要になります。最近は、手術の手技や器具も飛躍的に進歩しており有効な治療法ですが、ご高齢の方や健康にご不安がある方にとっては、やはり、避けたい治療法と感じられるのも致し方ないと思います。

軟骨が少なくなり関節の間隔が狭くなっている「変形性膝関節症」のレントゲン写真
【資料提供】
かとう整形在宅クリニック
<在宅療養支援診療所> 院長:加藤 泰司
〒560-0085 大阪府豊中市上新田2-24-4 メゾン千里中央106号室
URL:http://www.kato-seikei-zaitaku.com
医師による治療に満足できない方に
ここまで、膝や腰の関節の痛みのメカニズムや一般的な治療法についてお話してきました。しかし、医師による治療に満足できない方というのは、決して少なくないように思います。
私が診察室でお話する患者さんだけでなく、雑談で話をする知り合いの方も、異口同音におっしゃるのが、「整形の先生は、『まぁ、年のせいもあるし……』とおっしゃるのです」とか、「整形では、温めたり電気をかけたりといった治療はしてくれますが……」とか、「痛み止めは効くのですが、どうも胃が荒れてしまって……」などといったことです。
しかし、医師に相談しても、あまり劇的な改善が見込めないということだと、本当に困ってしまいますね。
そのような方にとっては、医師が積極的に取り入れていない観点からアプローチをしてみてはどうかと思います。
その一つが、「関節の軟骨や粘液を元の状態に近づけていく」という考え方です。年齢により機能は低下しているとはいうものの、もともとは自分の体の中で作り、再生していた軟骨や粘液です。それらのサイクルに着目し、自分自身の力で症状を和らげていくという考え方は、意外なようですが、医師による治療法には基本的に含まれていません。
軟骨の再生や痛みの軽減に作用するN?アセチルグルコサミンやMSM(メチルスルフォニルメタン)といった成分が、最近、話題になっているのは、こういった背景があるのではないか、と思います。
もし、あなたが医師による治療の成果に満足できていない場合には、N?アセチルグルコサミンやMSMは健康食品やサプリメントとして販売されていますので、補完的な治療として併用してみるのも一つの方法です。ただし、医薬品と異なり、商品にはばらつきがありますし、安全性の問題も依然として存在します。
また、テレビや新聞・雑誌だけでなく、最近はインターネットでも情報や商品が氾濫しています。何より、あなたの健康のために、専門家にご相談になり、安全が確認された信頼のメーカーの商品を用いられることをおすすめします。
はざま けんじ
医師・医学博士・外科専門医・呼吸器外科専門医。
平成7年大阪大学医学部卒業後、第一外科に入局。国公立病院にて外科診療に携わった後、平成12年大阪大学大学院医学系研究科博士課程。平成16年同修了。平成16年ファルメディコ株式会社 代表取締役。
現在、有限責任中間法人 薬剤師あゆみの会 理事長。薬局の運営に携わるとともに、医師として、在宅医療や補完医療での活動も行っている。