第72回佐渡充高のワールドツアーリポート

石川遼の米ツアーデビュー戦は奇しくもタイガーのデビュー戦と同じ大会だ!
念願のマスターズ出場を決めた前後から石川遼(17)の元へ次々と米国PGAツアーのスポンサー推薦出場のオファーがあり、マスターズまでに3試合の出場が決定した。そのPGAツアーの記念すべきデビュー戦となるのが2月19日からのノーザントラスト・オープンだ。
ちょうどこの号が世に出始めた頃が開催中で、すでに結果がわかった時点でこれを読まれている方もいるかもしれないが、このノーザントラスト・オープンとはどんな試合なのか。そして、石川遼が活躍するには何が必要(だった)かを解説してみたい。
デビュー戦は84年もの歴史を誇る米ツアーで6番目に古い由緒ある大会・・・
ノーザントラスト・オープンはロサンゼルス・オープンとして1926年に始まり、今年で84年の歴史を数える米国PGAツアーの中でも6番目の伝統を誇る由緒ある大会だ。
1995年から07年まではニッサン・オープンと名称が変わり日本企業の社名が大会名でもあった。08年からスポンサーの交代で現在の名称になった。昨年はフィル・ミケルソンが優勝するなど、歴代チャンピオンはアーノルド・パーマー、トム・ワトソン、ニック・ファルド、フレッド・カプルス、アーニー・エルス、マイク・ウィアらメジャー勝者がずらりと名を連ねる。
しかし、なぜかジャック・ニクラスとタイガー・ウッズの優勝がなく、ゴルフ界の七不思議のひとつといわれている。とくにタイガーにとってこの試合は米国PGAツアーのデビュー戦という特別な意味を持つ。
当時、タイガーは高校生のアマチュアで、16歳1カ月と28日で大会史上最年少出場と大きな話題になった。生まれ育った場所も近く、地元の大声援の中でプレーしたが、5オーバーで予選落ちという残念な結果に終わった。
会場はロサンゼルス郊内外の名門やムニシパル(市営の市民優先の安価なコース)が使用されてきたが、1973年からは世界レベルの名門リビエラCCに舞台を移し(98年は除き)熱戦が繰り広げられている。
開催コースのリビエラCCはベン・ホーガンの「奇跡のカムバック」の舞台・・・
石川のデビュー戦の舞台となるリビエラCCは鉄人ベン・ホーガンの奇跡のカムバックの舞台としてあまりにも有名だ。60年前の1949年2月1日。夜の8時30分頃、ホーガンがアリゾナ州から車を運転してテキサス州の自宅へ向かう途中、霧で視界の悪い橋を注意深く徐行していると、対向車線から追越しをかけてきた長距離バスがホーガンの車に突っ込んできた。
ホーガンは助手席のバレリー夫人を助けようと反射的に上体を飛び重ねた。ところが、ホーガンは衝突の衝撃で首、左腕、骨盤などが砕け左足首にはハンドルの柄が突き刺さり、顔は原形を留めず、男性器も欠損する瀕死の重傷を負ったのである。
この衝撃的なニュースは全米を駆け巡り、誰もがホーガンの選手生命が終わったと悲しんだ。しかし、一命を取り留めたホーガンは約1年後の1950年、ロサンゼルス・オープンでツアーに復帰。サム・スニードにプレーオフで敗れたが2位と大健闘し「奇跡の復活」とアメリカ中が沸いた。
その感動の舞台となったことでリビエラCCにはホーガンの胸像が建てられ、今も出場選手を暖く見守っているかのようだ。そして、ホーガンは復活をとげた年の6月にメリオンで、翌51年はオークランドヒルズ開催の全米オープンに優勝し、その後もメジャー優勝を積み重ねた。
ホーガンにとってもタイガーにとっても同大会は後の躍進の礎となるなど、84年の歴史にはさまざまなエピソードが刻まれているのである。
同大会では過去に数多くの日本選手が活躍。石川の活躍は未知の芝攻略が鍵・・・
同大会にはこれまでも日本ツアーから多くの選手が挑戦し、好成績を残している。昨年は今田竜二が5位タイ、04年には丸山茂樹が2位。01年には伊沢利光がプレーオフに進出、惜しくも優勝は逃したが2位に入賞。92年には金子柱憲がわずか1打及ばずプレーオフに加われなかったが、3位タイと健闘した。石川がデビューするにあたり先輩たちの活躍や実績は大きな力となるだろう。
リビエラCC攻略の重要な点はキクユ芝とポアナ芝だ。キクユ芝はアフリカ原産の強い芝で人の手で根っこから抜くのが難しいほど手ごわい。フェアウエーからはボールが浮きやすく打ちやすいが、ラフからはフェアウエーに出すだけの厳しい状況に追い込まれることも少なくない。
もう一つはグリーンのポアナ芝(すずめの帷子)だ。ベースはベント芝だが、徐々にポアナ芝が侵入し2種類の芝が入り混じっている。日本のコースではポアナを取り除くが、ここではそのまま。だからグリーンを読むのが難しい。
このようにトッププロでも手こずるワイルドな芝が石川にとっては手ごわい芝となる。初のPGAツアーの雰囲気だけでなく、芝対策もスコアメークの鍵を握るのだが、果たして結果は…。



