■ヘルシートーク アトピー編(下)悩ましい「アトピー体質」と乳酸菌の免疫力
嶋田貴志ニチニチ製薬?中央研究所部長・博士(学術)
小児から成人まで幅広い年代層を悩ませている「アトピー性皮膚炎」。先月号では、小学生の頃からずっとその症状に悩まされてきた植田睦海さんさんが、その驚くほどの改善を「乳酸菌食品との出合い」と語っています。乳酸菌の免疫力と漢方薬との併用がさらに効果を生むというメカニズムに迫る。
(コラム)
「根本的に体内からきれいにする」
前号では、アトピー性皮膚炎に悩んでいた植田睦海さんが乳酸菌食品によって、症状が本人もびっくりするような好転を見せた例を取材させていただいた。顔やひじの内側に繰り返しあらわれていた症状が、昨年夏には半袖を着ることができお化粧も気にせずできるようになって大喜びだという。
「アトピーに悩むほかの人にも、ぜひ伝えたい」と植田さんは言う。乳酸菌食品と出合って5カ月、アトピー性皮膚炎の改善とともに生活パターンも積極的になったと明るく語る植田さんの顔には、これまでの辛かった日々を跳ね飛ばすくらいのエネルギーを感じた。
植田さんはこれまでの食生活を徹底的に改善するとともに環境を整え、乳酸菌食品を摂ることで「治る」ことを実感したという。「今までは即効性を求めて症状を抑えてきただけに過ぎず、根本的に体内からきれいにするためには時間がかかる」という意識で取り組み始めた。
いまは国際東洋医療柔整復学院・鍼灸学院講師として、柔道整復師・鍼灸師の卵たちが国家資格をとれるように指導している。そして自らは柔道の審判員のライセンスを取り、全国大会や国際大会に参加することを目標に頑張っている。
アトピー性皮膚炎は、炎症、かゆみ、赤み、乾燥、亀裂などをともなう皮疹が顔や首、ひじ・ひざの屈曲部に繰り返しあらわれ、ひどくなると全身に広がるアレルギー性疾患のひとつ。20歳以下の10人に1人が罹り、成人後も症状が治らない人も多くいる。アトピー性皮膚炎に罹る人は、この10年間でなんと2倍に増えているという。
痒みが激しくなり、掻くことによってさらにアレルギー性皮膚炎をひどくさせるという終りのない辛さ。アトピー性皮膚炎で悩んでいた植田さんが乳酸菌を摂ることで光明を見出したのである。
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今回は、ニチニチ製薬?中央研究所部長の嶋田貴志博士に、アトピー性皮膚炎の問題点となぜ乳酸菌に効果があるのかをお聞きした。
アレルギー疾患のひとつアトピー性皮膚炎
――アトピー性皮膚炎は原因が分からないと言われていますが、非常に複雑な要因が絡み合ったものなのでしょうか。
嶋田 アトピー性皮膚炎は、基本的にはアレルギー性の疾患です。原因が分からないと言われているのは、アレルギーの原因物質(アレルゲン)を除去しても、その症状が改善しないためだと思われます。
そのアレルギーも食物アレルギーであったり、家ダニであったりカビであったり人それぞれいろんなものが原因となっています。日本人の約半分ほどが特に家ダニに対してアレルギーを持っています。
いずれにせよ、アトピー性皮膚炎のスタートはアレルギーによる蕁麻疹(じんましん)などの皮膚の痒みから始まります。それを掻くことで傷が深く広くなり、症状が悪化して広範囲に広がり、治療が難しいアトピー性皮膚炎に進展していくと考えられています。
そうなると、アレルギーに適応する薬を処方しても治らないことが多いですね。
――よくアトピーにはステロイドが使われていますね。
嶋田 ステロイドというのは炎症を抑える薬です。アレルギー症状で皮膚炎がひどくなるのは、白血球が過剰に働いて悪さをするからです。ステロイドはその白血球の働きを抑えようという薬です。
――ステロイドによって免疫力が抑制される側面もあるのですね。
嶋田 そうです。ステロイドを使っている方は、風邪を引きやすい体質になることが多いですね。
――アトピーは複雑な因子の絡みから起きているということですが、ストレスという精神的な要因もあるのでしょうか。
嶋田 先ほどもお話しましたが、アレルギーは家ダニやハウスダストなどや食品に含まれるアレルゲンが主たる原因になっています。最近では、菌を寄せ付けないという抗菌作用のあるものを過剰に使うことが影響していることもあります。
ストレスとアトピー性皮膚炎との因果関係は証明されていませんが、ストレスによる免疫系の異常も指摘されており、その可能性は十分にあると思います。
――ストレスが免疫力を下げるのですかね。
嶋田 はっきりとしたデータはありませんが、ストレスというのはいろいろな分野で悪影響を起こしていることが分かっています。逆に、笑うことで免疫力が出て身体にいいと言われています。
免疫力と小腸の働き
――「免疫」というのは、そもそも何なのでしょうか。
嶋田 「免疫」というのは、字がそうであるように「病を免れる」という意味です。学術的に言えば、生体が自己と非自己を認識して、非自己を排除するという考え方から始まっています。つまり、自分の身体にもとからあるものとそれ以外のものを区別して、入ってきたものを体内から追い出す作用を言います。
ですから、感染症など入ってくるばい菌を排除したり、体内で発生するガン細胞を攻撃したりして、健康体を維持する働きをしているのです。
――植田さんは乳酸菌FK-23と乳酸菌LFK含有食品を摂り、生活のパターンを変えることが出来て、アトピーの症状が改善されました。それはどうしてなんでしょうか?
嶋田 小腸というのは免疫をつかさどる器官なのです。そこに乳酸菌が入っていくと、白血球などが活性化すると言われています。その菌体成分が白血球の働きを助けるわけです。
アレルギーが悪化する原因の一つに、腸内細菌叢の乱れや有害な真菌が繁殖することが一因と言われています。ですから、乳酸菌を食べることで腸内の細菌叢が改善され、アレルギー症状に好影響を与えていると思われます。一方、最近では乳酸菌の菌体成分がアレルギーを抑えるのではないかとの研究結果も報告されるようになっています。
ところで白血球のリンパ球(T細胞)には、Th1型とTh2型の2種類があります。人間は生まれたときにはTh2型のほうが強いのです。その後、いろいろな菌と接触することで、Th1型のリンパ球が強くなり、菌に対する抵抗性が強くなっていきます。このTh1型のリンパ球が強くなることで、アレルギーを起こしにくい体質になるといえます。ところが、薬の乱用で菌に触れる機会が少なくなったり、ストレスにより免疫に悪影響を及ぼしたりするとTh1型が強くならない状況になります。その結果、Th2型が強くなってアレルギー体質になりやすくなるのです。
乳酸菌はTh1型を強めることが分かっています。薬やストレスで弱まったTh1型を強める作用でアレルギーを起こしにくくするのです。
漢方薬との併用でアトピーに対処
――植田さんの例では漢方薬との併用を行っていますね。
嶋田 漢方薬というのは単一の成分で効果を示すのではなく、複合的な成分でさまざまな効果を示します。また、腸内に入って消化酵素や腸内細菌により分解、代謝されて初めて効果を示す成分も多く知られています。そのため、腸内細菌のバランスによってその効果は異なることも報告されています。そして、腸内細菌の調子を整える成分と一緒に漢方薬を飲むことで、その効果が高まることは十分に考えられます。
実際に、漢方薬(アレルギー疾患に適用される小青竜湯)と乳酸菌製剤との併用投与でアレルギー抑制効果が高まることを確認しています。

このグラフの縦軸はアレルギーの指標となり、上に行くとアレルギーが悪化していることを示します。少量の漢方薬では効果が見られていませんが、多量だとはっきりと効果が認められます。一方、乳酸菌製剤と一緒に漢方薬を飲むと、少量でも多量を飲んだときと同じくらいの効果が確認できました。
――アトピー患者にとって大切なことは、「食生活の改善」「適切なスキンケア」そして「腸内細菌叢の整備と体質改善」の3本柱が重要だと聞いております。
嶋田 そうですね。「食生活の改善」と「腸内細菌叢の整備と体質改善」はすべての病気に対しての予防に繋がります。これに「スキンケア」を加えるのは、アトピー性皮膚炎改善の基本と言えます。
「食生活の改善」は、動物性脂肪を減らす、野菜やキノコ、海草を多く摂る、良質のタンパク質を摂る、砂糖を控えるなど、生活習慣病の予防に言われていることとまったく同じです。
「腸内細菌叢の整備と体質改善」は、ヨーグルトなどの発酵食品を食べる、野菜やキノコ、海草を多く摂る、睡眠不足、ストレスを避けるなどが挙げられます。
――これは生活習慣病全般に関わるものかもしれませんね。
嶋田 そうですね。
――アトピーも含めてですが、人間の体が菌におかされる場合、疲れとか栄養のバランスが崩れたり、あるいは精神状態があまりよくない状態が続いた時が多いようですが……。
嶋田 人間の身体は精神的な部分が結構支配しています。植田さんの場合も、気候とか湿度とかあるいは精神状態によって症状にいろいろな変化が起きてきたようですね。そして乳酸菌食品を摂ることで症状が改善してきた時の彼女の前向きな姿勢が、さらに相乗的な効果を生んでいるようです。
――どうも有難うございました。
しまだ たかし

京都市生まれ。昭和63年三重大学水産学部卒業。同年ニチ
ニチ製薬?入社。現ニチニチ製薬中央研究所部長。大阪市立
大学大学院医学研究科客員研究員。博士(学術)。



