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第62回佐渡充高のワールドツアーリポート

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ビジェイ・シンが今季、特別なチューンナップを施して4度目のメジャーを狙う!

 
 45歳のビジェイ・シンが4度目のメジャー制覇を目指し再始動だ。現在シンは米国PGAツアー31勝(メジャー3勝)。あと1勝で外国人選手の最多優勝記録を達成することになる。さらに40歳を過ぎてからの最多勝利19勝を記録しており、あと1勝で節目の20勝に到達する。
 だから次の1勝はシンにとっては重要な意味を持つ。その1勝を「できればメジャー・トーナメント優勝で飾ることができれば」という強い思いを抱き、今季は特別なチューンナップで挑んでいる。


フィットネストレーナーを変え、新メニューでさらなる肉体改造に取り組み中!


 特別なチューンナップのその1はさらなる肉体改造だ。昨年秋にフィットネストレーナーをジェフリー・フロンクに変えて新メニューでトレーニングに励んでいる。試合に参加しているときは週6回、スタート前に45分、プレー後に60分。ツアーに不参加のときは自宅で朝と夜にそれぞれ90分行う。
 新メニューの特徴は有酸素運動を長めにして持久力アップを図ろうとしてる点だ。さらにバランスボールを使い不安定な状態でストレッチやロープを使ったトレーニングで体のコアの強化を目的にしていることも特徴だ。
 今季のシンをTVで見て「ずいぶん身体が締まった」と感じている読者も多いと思う。今年に入って間もない頃、インドで初めての開催となった試合で食中毒になり4日間寝たきり、1週間運動もできなかったことで一気に7キロも体重が落ちてしまったこともある。しかし、回復してプレーする姿はまるで20歳代のようにしまり、かつしなやかになっていた。


スイングプレーンをスクエアからアップライトに変えてパーオン率が急上昇!


 チューンナップのその2はスイング改造だ。昨年まではスクエアなスイングプレーンだったが、今年はアップライトなプレーンに変えているのだ。PGAツアーでのスイングの主流はトップで左腕のラインと肩のラインが重なるいわゆるスクエア・プレーン。
 鉄人ベン・ホーガンのスイングをさらに進化させた理論をデイビッド・レッドベターらが広めていき、ニック・ファルドらがその先駆者となった。現在ではタイガー・ウッズをはじめトップランカーたちのスイングがこれに近い。
 シンもその合理性を理解しスクエアプレーンのスイングに変えたが、昨年、自分の性に合わないことを実感したのだ。ファルドらは「去年のほうが良い」としているが、シンには変えたい訳があった。理由はトップでクラブがシャット気味になる悪い癖が頻繁に現れミスショットの原因になったからだ。
 またアップライトなプレーンはシンの昔ながらのスイングなので自分の感覚にフィットするという心地よさもあった。スイング改造の効果はすでに現れ、昨年45位のパーオン率が今季は5位にまで急上昇している。


チューンナップを決意したのは昨年終盤の不本意なプレーがきっかけだった!


 チューンナップの必要性を感じたのは昨年終盤の不本意なプレーがきっかけだった。ツアーの大詰め9月のプレーオフシリーズ初戦も奮わず2試合連続予選落ち。次のドイツバンク選手権でも初日3オーバーで予選落ちの危機。2日目も6番まで3オーバーは変わらず。もし3試合連続予選落ちをすればPGAツアー参加15年、379試合で初の出来事になってしまう。が、その後5バーディーを奪い通算2アンダーで予選通過。危機は免れたものの、シンとしては納得がいかなかった。
 アメリカでのシーズンを終え、11月にはシンガポール・オープンに参加。復調の兆しは垣間見えたもののアンヘル・カブレラに競り負け、詰めの甘さを露呈する結果になってしまった。この試合がシンに“変化”を決意させたのだった。


アジアンツアーの名誉メンバーに選出され20年振りに嬉しい名誉回復を遂げる!


 メジャー優勝へ向けて今季の試合日程を大きく変える予定だ。昨年までは年間27試合、米国外でも数試合参加していた。が、今季は試合数を絞り込み、よりメジャーに向けてフォーカスできるスケジュールを組む。3月はフロリダシリーズ4試合が行われたが今年は2試合に参加を減らすなどすでに調整を行い、年間試合数も25試合までにする予定だ。体調も万全で「これまでで最も良い状態。年齢は単なる数字に過ぎない」と自信をのぞかせている。
 そして新しい自分に生まれ変わろうと努力を重ねていた3月4日、「アジアンツアーの名誉メンバーに選出」という嬉しいニュースが飛び込んできた。アジアンツアーはシンにとって悪夢ともいえる思い出しかない。85年インドネシアのジャカルタ郊外で開催されたインドネシアン・オープンで意図的に過少申告したとの嫌疑をかけられ永久追放されたからだ。
 シンは「事実無根」を主張したが認められず、そのときのスコアカードもすでに処分され無実を証明できるものがなくなり汚名と無念だけを残していた。名誉メンバーということはすべてがクリアになったことを意味し、20年以上も心の奥底に鬱積していた重いものがようやく取り除かれたのだ。


チューンナップ効果で世界ランクもトップ10に復帰。いつ勝っても驚きではない!


 今季はまだ未勝利だが、ペブルビーチではプレーオフまで残り、昨年優勝したパーマー招待では最後まで優勝争いを繰り広げて3位、世界選手権のCA選手権では2位タイと優勝への布石となる活躍を見せている。
 昨年終盤には13位にまで落ちた世界ランクも4月はじめの段階でトップ10に復帰。チューンナップの効果は明らかだ。シン自身も待ち望む次の1勝はいつ、どの試合なのか。それがメジャーであっても何の驚きでもない。