「健康で元気に老後を過ごそう」をテーマに近畿大学がアンチエイジングセンターを開設
めざしてほしい「健康長寿」
―抗加齢実現へ「チェック」「ケア」「キュア」を―
近畿大学アンチエイジングセンター副センター長
山田秀和近畿大学医学部奈良病院皮膚科教授
Q アンチエイジングセンター開設の発案者と聞きました。なぜ開設しようと?
A 「皮膚は心の鏡、内臓の鏡」といわれ、皮膚を診ると内臓や心の状態がわかることが多々あります。それを皮膚だけにとどめず明確な数値を出して人間の体の状態を知り、病気になる前にケアすれば健康に過ごせます。それがアンチエイジングへ目を向けるきっかけです。アンチエイジングというと、女性の美容的なイメージをもたれる方もいると思いますが、それはあくまで一部というのが私の考え方です。
5年ほど前に現在の日本抗加齢医学会に入って勉強を始め、病院内でも薬剤師や看護師、理学療法士、栄養士を集めてアンチエイジングの勉強会をスタートしました。アンチエイジングドックをつくるのに新たな投資はほとんど必要ありませんし、総合大学の機能を活かして医学部や薬学部、農学部、さらに健康スポーツ教育センターが協力体制を組めれば開設は可能と思い、3年前に「アンチエイジングドックをつくりたい」と提案したところ賛同を得ることができました。
Q アンチエイジングとは?
A 抗加齢医学と呼んでいますが、「病気の治療」から「健康な人のさらなる健康」を指導するプラスの医療で適切な食事や運動、精神療法を指導し、場合によってはサプリメントなどを処方することで加齢や老化の原因に対して早めに対処し、年齢を重ねても質の高い生活を維持することを目的に進められる予防医学です。ピン、ピン、コロリという意味で「PPK」と呼んでいますが、目指すのはこれです。わかりやすくいえば寿命と健康寿命を揃えることです。受診対象者は「私は健康です。体の調子はいいと思っています」という人です。
Q すでに診療を始めていますが、どういう方が受診していますか。
A 男女比率は半々で年齢は50〜70代の方が多いです。男性は企業の役員クラスの方が中心です。「どういう理由で受診されたのですか」と聞くと、「健康長寿を目指していますので」と言われる方がほとんどです。そのためにケアしようと。病気を予防しようという意識が高い方ですね。
Q アンチエイジングドックが中心になると聞きました。
A 医師という仕事から見ると、まず老化度を測定するのが第一です。それで受診者の体の状態を把握します。そして出てきた数値で状態を判定します。それから受診者の体の状態に合った食事や運動療法などを指導します。これをテーラーメイド医療といいますが、それを実践するために最初にドックで判定する必要があります。
ドックは3コースから選択
Q 予約しないと受診できないのですか。
A そうです。受診日は現在、火、水曜日の午後です。午前中は一般外来があるからです。現状では1日に2人しか受診できません。検査の項目が多く時間がかかるためです。それが難点ですね。問診表も書いてもらい、前日から節制してもらわないといけません。たとえば糖の検査は最低12時間絶食しないと血糖値が正確にとれないからです。
奈良病院に「アンチエイジングドックを受診したいのですが」と電話をすると担当の部署につながります。そこで名前と連絡先を聞いて申込用紙やドックのパンフレットを事前に送ります。受診される方は、ドックが3コースありますから「何日に、何コースを受診したい」と電話をかけてもらえばいい。指定日が空いているかチェックして返事します。そして日時が決まると事前に受診時にしなければならないことを書いたパンフと検査用(尿)容器を送ります。
血管年齢
骨年齢・骨密度測定
体組成・体脂肪測定
Q 3コースあるといわれましたが。
A はい、Aが3万円台、Bが6万円台、そしてCが9万8000円です。検査でチェックする項目が多いか少ないかで違うと思っていただければいい。ただ、健康を本格的にケアされるのであればBコースかCコースにしていただければと思います。時間は2時間くらいかかります。
Q 検査の主な項目は?
A 健康診断のように採血して行います。項目は一般的なものに加え、血管年齢や成長ホルモンなどのホルモン年齢、神経年齢、筋年齢、骨年齢、そして酸化ストレス度を評価します。
Q 検査の結果を聞いて対処するには?
A Aコースで3週間後、B、Cは4週間後に来てもらいます。検査数値を出すのに時間がかかるからです。来院されたときに30分間ほど私が判定結果など説明、カウンセリングします。その結果、例えば骨密度が低く筋力も低下していて「これは整形外科で治療しないといけない」と判定した場合、受診者に説明して運動や治療を勧めます。終われば次の日時を予約していただきます。栄養指導を要望されると指導が始まります。受診者とは長いお付き合いになります。
Q 検査項目が多いですから受診者は結果を聞いても理解しにくいのでは?
A そうですね、検査項目が多いですから一度に説明しても受診者は理解しにくい。そのため1カ月後か3カ月後に再度来てもらうようにします。判定の結果を見て基本的な説明やカウンセリングをして、たとえば「食事が問題ですね。食事指導を受けられますか」と聞いて「受けてみたいです」と言われた場合、「食事日記を書いてもらえますか」といった話をします。
受診者に目立つ睡眠不足
Q 薬学部や農学部などとの連携はどのように?
A 検査の結果、数値で問題がある受診者には食事(食養生)や運動療法を行って改善に取り組みます。そして半年か1年、2年後にまた測定します。そこでうまくいっていればOKです。しかし、まだ問題があればサプリメントを摂りますかという話をしていきます。ここで薬学部の先生に協力してもらって受診者にリスクが少なく、かつ効果のあるサプリメントの話をしていただく。食事療法は農学部の先生に栄養指導を、運動療法は健康スポーツ教育センターの先生に協力していただくということになります。食事療法の指導もアンチエイジングですから普通の食事指導では糖尿病患者と同じになってしまうのでアミノ酸や抗酸化物質のレベル、あるいは重金属のレベルとかが入ってきます。
Q 食事や運動療法を指導し、受診者にOKを出される目安の数値は?
A アンチエイジングの基本はそれぞれの項目で上位10%、偏差値70%以上を目指すことです。
Q ドックはスタートしたばかりですが、何か見えてきたものはありますか。
A 受診されている方で目立つのは睡眠不足です。齢をとってくると不眠を訴えられる方が多い。「夜寝られない」「朝早く目が覚める」と。これはストレスと関係してきます。皮膚科から見ると皮膚の乾燥はストレスと関係することが多い。しかし年齢によって男女差があります。そうすると対応の方法が違ってきます。精神的なもの、心配事があると皮膚は乾燥します。
Q 受診者の多くは50〜70代ですがアンチエイジングは若い人でも体をケアするには必要では。
A もちろんです。アンチエイジングは美容や老人対象のイメージをもたれますが私はそう考えていません。スポーツアスリート(競技者)も使えると思っています。近畿大にはスポーツ分野で有力な選手も多いですから管理もできます。実際にアンチエイジングセンターの機能を活用して優秀なアスリートが誕生すれば理想的だと考えています。今後、アスリートをどう鍛えるかを数字的な裏付けを含めて考えています。いずれアスリートコースをつくる考えです。
近畿大学医学部奈良病院
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