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ダニ・スギ花粉のアレルギー原因物質の微量測定が可能に

国民の3分の1が何らかのアレルギー性の病気を持っている。その対策として、セルフケアが重要なものとなっている。主要なアレルゲンのダニやスギ花粉除去と回避がその中心だが、そのためにアレルゲンの測定は欠かせない。高感度測定キットの開発が、住環境や労働環境を変えるものとして期待されている。

●アレルギーの現状
 最近のアレルギー患者の増加は、異常とも言えそうである。花粉症、アトピー性皮膚炎、喘息、じんま疹、通年性アレルギー性鼻炎、食物アレルギーなど、いずれもアレルギー性の病気である。今や人口の3分の1以上が何らかのアレルギー性の病気を持っており、国民病とさえ言われている。花粉症のような季節的なものもあれば、1年を通して症状が続くものもある。また、小さな赤ちゃんから、70歳以上の老人まで年齢を問わず、アレルギーの発症が見られている。症状も花粉症や鼻炎のような鼻水や鼻づまり、くしゃみの発作、じんま疹やアトピー性皮膚炎のような皮膚症状、さらには、気管支喘息においては、咳や呼吸困難を引き起こし、毎年数千人もの人が亡くなっている。


●アレルギー発症のメカニズム
 アレルギーになるメカニズムは、おおよそ解明されている。アレルギーの原因物質(アレルゲン)が呼吸や食事によって鼻や気管支粘膜に付き、体内に入ると、免疫細胞の一種である肥満細胞(肥満の原因となる細胞ではない)や好酸球と呼ばれる細胞から、いろいろな化学物質が放出される。この化学物質は、痒みやくしゃみを引き起こしたり、過剰な粘液を出させたり、気管支を収縮させたり、いろいろな反応を引き起こす。
 
●アレルギーの治療方法
 アレルギーの治療としては、大きくセルフケアとメディカルケアの2つの方法に分けられる。セルフケアとは、アレルゲンを体内に入れないことによる予防と治療の方法である。
一方、メディカルケアとは、抗アレルギー薬や抗ヒスタミン薬などの薬剤使用や、場合によっては手術といった、医師による予防と治療の方法である。しかし、近年は前者が重要であるとする考え方が広まっている。
 日赤和歌山医療センターの榎本雅夫医師の調べでは、和歌山県のある地域における主要アレルゲンとして、ダニ(39%)、スギ花粉(36%)、ハルガヤ(22%)、ネコ上皮(20%)となっている。


●セルフケアの方法
 2000年に発足した厚生労働省科学研究費助成による「アレルギー性鼻炎の科学的根拠に基づく医療(Evidence-based Medicine)によるガイドライン策定に関する研究」の研究班によると、主要なアレルゲンであるダニ、スギ花粉、ペット抗原について、その除去方法および回避方法が簡潔にまとめられている。
・ダニアレルゲン
(1)排気循環式の掃除機を用い、1週間に2回以上掃除する。
(2)織物のソファ、カーペット、畳は出来るだけ避ける。
(3)ベッドのマット、布団、枕にダニを通さないカバーを掛ける。
(4)部屋の湿度を50%、室温を20?25℃に保つ。
・スギ花粉
(1)花粉情報に注意する。
(2)飛散の多いときの外出を避ける。
(3)飛散の多いときは窓や戸を閉める。
(4)外出時にマスクやメガネを使用する。
(5)表面の毛羽だった毛織物のコートの使用を避ける。
(6)帰宅時には衣服や髪の毛をよく払う。
(7)掃除を励行する。
・ペット抗原(特にネコ)
(1)できれば、飼育を止める。
(2)屋外で飼い、寝室には入れない。
(3)ペットとペットの飼育環境を清潔に保つ。
(4)フローリングにする。
(5)通気をよくし、掃除を励行する。


●アレルゲンとしてのダニ
『家屋害虫辞典』(1995年)によると、通常の日本家屋では、ダニはおよそ100種類以上はいるとされている。ハウスダストと言われる室内塵には、1g当たり10?数千匹のダニが存在している。4畳半のカーペット敷きの部屋になると、100万匹となり、1軒の家屋になると、数千万匹から数億匹のダニが存在している。生きたダニ、死骸、排泄物のいずれもアレルゲンとなり、アレルギーに深く関わっている。ハウスダスト1g中に2μg(100万分の1gの単位)以上のダニアレルゲンがあると、喘息などのアレルギーが起こりやすいとされている。

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(図1)ヤケヒョウダニ(♀)の電子顕微鏡写真(写真提供:高岡正俊)
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(表1)厚生労働省生活局による「健康で快適な住宅に関するガイドライン」


●アレルゲンとしてのスギ花粉
 1958年から天然林を伐採して人工造林するという拡大造林政策のもとで、単一樹種が短時間に一斉に植えられ単純一斉林となった。樹齢16?35年の花粉産生適齢期のスギが、日本中を覆ってしまったため、現在も大量の花粉が飛散することになった。一度スギ花粉症に罹ってしまうと、自然治癒率は3%とも、0.5%とも言われている。そのため、しばらくは、スギ花粉症患者は増える一方であることが予想される。
 スギ花粉は直径が30μmの球形で、パピラと呼ばれる突出部がある。1個の花粉で5.4pg(1兆の1gの単位)という極微量のアレルゲンが含まれており、50個程度の花粉が鼻の中に入ると、いろいろな花粉症の症状が発症すると言われている。
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(図2)花粉の電子顕微鏡写真


●アレルゲンの測定
 ダニ、スギ花粉に関わらず、セルフケアを実行する上で、アレルゲンの量を知ることは必須であると考えられる。
 高機能乳酸菌を中心に研究開発しているニチニチ製薬株式会社では、ダニおよびスギ花粉を測定できる高感度測定キットを開発し、キットの販売と同時に受託測定も開始した。キットは2種類のダニのアレルゲンとスギ花粉の3種類を特異的に、高感度に測定することができる。具体的な感度として、喘息の感作の指標となるダニアレルゲン濃度は、ハウスダスト1g中に2μgであることを上述したが、このキットならば、300pgと、およそ1万分の1の量を検出することができる。スギ花粉でも、鼻の中に入って症状を起こすとされる量、50個をほぼ検出することが出来る。特異性については、動物実験でマウスにスギ花粉を食べさせて、その糞便中のアレルゲンを測定したところ、投与した量に比例して、出てくることを確認した。食べ物のカスや腸内細菌、酵素や腸内の細胞など様々な物質が混ざっている糞便の中からも、しっかりとスギ花粉だけを測定することが可能であった。
 このような優れたアレルゲンの測定が出来るキットを大学や研究機関を中心に発売しているが、特殊な機材や技能も必要であることから、一般向き、または他種の企業からのこれらアレルゲンの測定の依頼も受けている。


しまだ たかし
京都市生まれ。83?87年、三重大学水産学部。87年、ニチニチ食品株式会社(現在のニチニチ製薬株式会社)に入社。2001年、三重大学生物資源学部にて博士(学術)を取得。02?03年、京都大学大学院医学研究科 研究生。04?09年、南京医科大学国際アレルギーセンター 客員研究員