あなたの花粉症予防対策は?――注目される「乳酸菌」の効果
日本赤十字社和歌山医療センター
耳鼻咽喉科部長
榎本雅夫Tadao Enomoto
花粉症の飛散量は昨年より少ない予想ですが、飛散する以上は【魔の季節】にかわりはありません。その対策として、日本の花粉症研究の第一人者である榎本雅夫医学博士は「いま注目は乳酸菌。なかでも乳酸菌の成分【LFK】です。臨床試験でその効果が確認されています。副作用もなく、症状軽減・予防サプリメントとして毎日食べられることをお勧めします」と述べています。(編集部)
◆花粉症は国民病
花粉症といえば、日本国内では知らない人はいないと思われるほど、ポピュラーな病気です。日本国内でおよそ16%の人がこの病気に罹っているとされ、有病率は都市部ほど多いとされています。この有病率の高さから、今や国民病とも文明病ともいわれ、毎年花粉飛散時期の春先にはテレビや新聞など多くのマスコミで取り上げられています。
スギ花粉症の治療などにかかる費用は約3000億円と膨大な額と推定されています。さらに、花粉症による労働意欲の減退などの間接的なものも加えれば、その経済的損失は計り知れないでしょう。
◆花粉症は新しい病気
花粉症の歴史をひもといてみましょう。
1961年に荒木英斉先生が日本にも花粉症で悩んでいる人がいることをブタクサ花粉症で報告したのが最初です。これ以降、98年まで、毎年のように様々な花粉症が報告されてきました。今日、花粉症といえばスギ花粉症の代名詞のようになっていますが、スギ花粉症に関しては齋藤洋三先生が栃木県日光地方で3月から4月にかけて鼻、眼、咽頭にアレルギー症状を訴える21症例に出会ったのがそのきっかけでした。1964年に「栃木県日光地方におけるスギ花粉症 Japanese Cedar Pollinosis の発見」という論文にその詳細について報告されています。
◆花粉症の予防方法
当時の日本ではスギ花粉症で悩んでいる人はほとんどいませんでしたが、現在では多くの国民がこの病気に悩んでいます。
なぜこんなにも花粉症が増加してしまったのでしょう? 非常に興味深いテーマであり、多くの医師や研究者がその要因を検討しています。増加の要因が明らかになれば、スギ花粉症の発症を予防や治療に応用できると考えられます。
現在推定されている要因には、(1)飛散しているスギ花粉数の増加(2)ダニによるアレルギーが増加し、アレルギー発症の引き金が引かれたことによりスギ花粉症も増えた(3)大気汚染、特にデイーゼル車が排出するガス中にある排出微粒子(4)食生活の欧米化(5)清潔志向による細菌との接触機会の減少(6)抗生物質の乱用による腸内細菌叢の変化 などが考えられています。
私たちの研究グループでは、特に(5)と(6)の可能性に注目しました。
(5)については、感染症とアレルギーの関係です。近代以前から日本人を苦しめてきた結核は、第2次世界大戦後の栄養・衛生状態の改善、BCGワクチンの導入、抗結核剤リファンピシンの出現により劇的に減少しました。この変化と反比例するように、アレルギー性喘息や鼻炎、アトピー性皮膚炎、そして花粉症が増加しています。和歌山県のある地域の中学生について、ツベルクリン反応とアレルギー素因について調査しました。その結果、ツベルクリンに陰性の生徒にアレルギー体質であることが分かりました。この発表は、世界的にも非常に大きなインパクトを持って受け入れられました。
(6)については、抗生剤の使用頻度とアレルギーの関係です。イギリスにおいて、2万数千人規模での調査の結果、2歳以下で抗生剤を使用することで、アレルギーの発症するリスクがおよそ6倍も高くなることが確認されました。
◆花粉が飛ぶ前から乳酸菌を食べましょう
これらの研究結果から、細菌と人との関わりが非常に深いことが分かります。細菌と触れる機会が少なくなり、抗生剤の使用によりさらに細菌を不自然なまでに遠ざけています。この結果、本来私たちが持っている免疫機能に異常を来し、アレルギー性の病気になりやすいのではないかと推測できます。
そこで、安全な菌と接触することが大切なわけです。安全な菌の代表として、乳酸菌が挙げられるでしょう。すでに、アレルギーを改善するとされる乳酸菌の商品が市販されています。その多くは、動物実験やヒトでの臨床試験でその有効性が確認された乳酸菌です。いろいろなメーカーから、いろいろな種類の乳酸菌が販売され、ヨーグルトだけでなく、ドリンクタイプ、顆粒やカプセル、錠剤などの各種の形態のものが市販されています。さらには生菌か死菌の違いもあります。
私たちの日本赤十字社和歌山医療センターに花粉症で通院されている患者さんに、花粉が飛ぶ前から乳酸菌を食べてもらいました。すると、乳酸菌を食べていない人に比べて、鼻の症状が軽くなっていること、アレルギーの薬の使用量が少なくなっていることが分かりました。この試験で用いた乳酸菌は、人の腸管から分離された「エンテロコッカスフェカリス FK23菌」という種類の菌の殻を破ったもので、「LFK」と呼んでいます。
この「LFK」は、生きた菌でなく、乳酸菌の成分といえるものです。従来、「乳酸菌は生きていなくては効果がない」と言われていましたが、私たちは死菌でも効果のあることを発見しました。ただし、効果には個人差がかなり大きく関与しており、同じ乳酸菌、同じ製品であっても効果の出やすい人、出にくい人がみられます。こればかりは、実際に個人個人が試すしかありませんが、乳酸菌にはアレルギー以外にも様々な効果効能がありますので、花粉が飛ぶ前から乳酸菌を食べて花粉症を予防してみましょう。






